原題:The Act
作品データ
- ジャンル:実話に基づくフィクション
- シーズン:リミテッド・シリーズ(完結)
- エピソード:8
- 主な舞台:ミズーリ州スプリングフィールド
- アメリカでの放送:2019
- キャスト:パトリシア・アークエット(ディーディー・ブランチャード)、ジョーイ・キング(ジプシー・ローズ・ブランチャード)
- メモ:シーズン最終話まで視聴済
- 評価;
事件の概要
2005年6月14日、ミズーリ州スプリングフィールド郊外。自宅寝室で、数日前に刺殺されたディーディー・ブランチャードの遺体が発見された。
発見のきっかけは、facebookに投稿された不穏なメッセージを読んだ近所の住人の通報からだった。ディーディーの娘ジプシーの姿はなく、多くの病を患う車いすの少女ジプシーの安否が心配される中、facebookの投稿から、ウィスコンシン州に住むニック・ゴディジョンを容疑者として特定した警察は、ニック宅を急襲し、ニックと一緒にいたジプシーを発見した。
ジプシー発見の知らせに安堵した近隣の住人たちは、7年もの間、ディーディー母子に欺かれていたと知ることになる。ジプシーは病気ではなく、自分の足で歩けるのだ。娘を支配するためのディーディーの虐待が暴かれる一方で、ディーディー殺害はジプシーが出会い系サイトで知り合った恋人ニックと共謀したものだと判明した。
ストーリー
事件発生の7年前。慈善団体から贈られたスプリングフィールドの家にディーディーとジプシーの母子が越してくる。新たな家を喜ぶ車いすの少女ジプシーと、献身的に娘を支えるディーディーの仲睦まじい姿はニュースにも取り上げられ、話題になる。
友達を欲していたジプシーが向かいに住むレイシーと親しくなる一方で、心身ともに娘を支配するディーディーは警戒心を解かない。ジプシーの病気はディーディーが作り上げたもので、車いすも、剃髪も、世間を欺くディーディーが強要していたのだ。
成長とともに母の欺瞞に気づき始めたジプシーは、同年代の子のように異性への興味が膨らんでいく。やがて、母の目を盗んでネットを楽しむようになったジプシーは、出会い系でニックと知り合う。
おちゃのま感想
先に【今月のピックアップ】の記事を書いたので、こちらの感想は簡単にまとめようと思います。
実話をもとにしたフィクションという断りが入ってますが、wikiで知ることのできる事件の概要とドラマの内容はほぼ同じです。フィクションの部分は、知る由もない母子の日常や、ディーディーの背景、近隣の住人たちの様子など、ドラマ化にあたって脚色が必要だった部分がそれにあたるのではないかと思います。そんなわけで、これが実話?という衝撃が強く、震撼させられた作品でした。
ディーディーがジプシーにした虐待の数々が実に恐ろしく、長期に渡り周囲を欺けた事実に現代社会の問題を感じずにはいられませんでした。頻繁に娘を病院へ連れてくるディーディーの代理ミュンヒハウゼン症候群を疑った医師はひとりしかおらず、その医師もこの母子に深入りしませんでした。
ジプシーを支配するディーディーの執念はすさまじく、ジプシー本人にも実年齢より下だと信じ込ませ、ついに成人の年齢になると成人後見人になろうと画策します。同情心を巧妙に利用するディーディーに騙され、検査すらせず、ディーディーが求める治療をジプシーにした医師たちは、事件を知ったのち、どのように感じたのでしょうか。医師やこの母子を支援していた慈善団体などの証言は裁判シーンでもなく、少々、残念に感じる部分でした。
衝撃だった事件に注目してしまいますが、忘れてはならないのがドラマとしての質の高さです。特に、ディーディー役パトリシア・アークエットとジプシー役ジョーイ・キングの、たがいに対する複雑な感情表現は見事でした。鬼気迫るディーディーもさることながら、無邪気な笑顔の裏で次第に母への殺意を蓄積し、母が与えた夢の世界と現実世界の狭間に迷い込んだような不安定なジプシーの心理描写は素晴らしかったです。
有罪答弁したジプシーは10年の懲役刑、陪審裁判に臨んだニックは仮釈放なしの終身刑を宣告されました。塀の中のジプシーは、母との生活より今のほうが自由があると語っているとのこと。
『見せかけの日々』は、製作総指揮に名を連ねるミッシェル・ディーンの記事をもとにしたドラマで、ディーンさんはジプシーに取材した人物です。ドラマの中で、ジプシーがニックを操るように見せた点は、ジプシー本人にも母親同様に他者を操る面があると示唆したかったからもしれません。
※服役中のジプシーや、彼女の家族は無断で作品に実名を使用したディーンに腹を立ててるという記事があります。