原題:Mr Bates vs. The Post Office
作品データ
- ジャンル:実話に基づくドラマ
- シーズン:1(リミテッドシリーズ)
- エピソード:4
- 主な舞台:イギリス
- リリース:2024
- キャスト:トビー・ジョーンズ(アラン・ベイツ)モニカ・ドラン(ジョー・ハミルトン)リア・ウィリアムズ(ポーラ・ヴェネルズ)
- メモ:最終話まで視聴済
- お気に入り度:
あらすじ
2000年代のイギリスで起きた英国史上最大規模の冤罪事件に基づく物語。
新たな会計システム“ホライゾン”が導入された後、イギリス各地の郵便局で帳簿が合わない事案が発生した。困惑する郵便局長たちの声に耳を貸さないポストオフィス(英国郵便公社)はサポートも調査もせず、契約に従い、郵便局長に不足金の補填を求めた。契約書にサインしていた郵便局長たちは追い詰められ、10数年の間に700人以上もの郵便局長が詐欺や横領の罪に問われ、私財を奪われ、人生を破壊され、服役者や自殺者まで出すことになった。
不足金の支払いを拒み、廃業した郵便局長アラン・ベイツは、妻とふたり田舎へ引っ越し、真実を追求する。やがて、アランのもとに理不尽に人生を壊された郵便局長たちが集まり、彼らの長い闘いが始まる。
おちゃのま感想
社会を動かしたと言われるドラマ。注目したきっかけは、問題の会計システム“ホライゾン”が富士通のものだと知ったからですが、国有企業のポストオフィスに挑み続ける冤罪被害者たちの真摯な姿に心揺さぶられるドラマでした。被害者の多さやポストオフィス側の高圧的な対応を含め、フィクションならば、リアルさに欠けると感じたと思うのですが、これは実話。
このドラマを見て感じたものを表現するとしたら、不可解という言葉がピッタリです。中でも理解に苦しむのが、システムエラーを訴える郵便局長たちに対応したポストオフィスの職員たちです。ベイツ氏を中心として訴訟を起こした原告団だけでも555人もいるというのに、ホライゾンのサポートを含めポストオフィスの職員たち全員、何の疑問も持たなかったのでしょうか。「心ある人間ならば」と考えてしまい、不可解な感情が残りました。
さらに、不可解なのが、ポストオフィス側で責任をとった者がいない点です。システムの欠陥を利用した個人が横領した事件だったとすれば、その人は犯罪者として逮捕されていたはずです。3500人もの郵便局長たちが追求されたというのに、現時点で(事案発生から十数年が経ってるというのに)ポストオフィスの経営陣で起訴された人がいないとは。
さらにさらに、消えたお金(不足金+補填金)はポストオフィスの収入になっていたと考えられる点や、2022年のBBCの取材(https://www.bbc.com/news/business-61020075)によると富士通の日本の経営陣がこの件をまったく知らなかったという事実も不可解すぎます。
このドラマは、モヤモヤした嫌なものが何度も心に広がるのですが、一方で、苦しめられた郵便局長さんたちが真実を求めて闘い続けた姿に心揺さぶられ、調査員や弁護士といった外部から事件にかかわった人々の真摯さに感動しました。第4話の法廷シーンは、まさにクライマックス。ポストオフィス側弁護士の巧みな質問にも動じず、冷静かつ誠実に自分の言葉で事実を語った郵便局長たちの姿は見る者の心を打つものでした。
この作品を見たいがためにミステリーチャンネルさんに加入したというのに、あまりにも重い事実や受けた衝撃の強さを文字にすることが難しく、ようやく書いた感想も批判的な内容になってしまいました。ドラマの感想とは言えない記事になったこと、ごめんなさい。
最後に。このドラマの反響の大きさは、ドラマにも登場するポストオフィスの元CEOポーラ・ヴェネルズ氏の大英帝国勲章剥奪に繋がったとのこと。さらに、当時の首相リシ・スナック氏が有罪になった冤罪被害者たちを免罪する新しい法律を発表したり、郵政大臣が予算に補償金が組まれたと発表したりという類を見ないものだったとのこと。失くしたものを取り戻すことはできないけれど、被害者やその家族のみなさんが平穏を取り戻していることを祈ります。