原題:Under the Banner of Heaven
作品データ
- ジャンル:実話をもとにした犯罪ドラマ
- シーズン:1(完結)
- エピソード:7
- 主な舞台:ユタ州
- アメリカでの放送:2022
- キャスト:アンドリュー・ガーフィールド(モルモン教徒の刑事パイアー)ギル・バーミンガム(パイユート族の刑事タバ)デイジー・エドガー・ジョーンズ(被害者のブレンダ)
- メモ:最終話まで視聴済
- お気に入り度:
あらすじ
住人の多くがモルモン教徒というユタ州の町で、教徒のブレンダ・ラファティと1歳になる娘が惨殺される事件が起きる。事件現場になったブレンダの自宅に駆けつけた刑事パイアーはむごたらしい惨状に愕然としながらも、血まみれの姿で自宅前にいたブレンダの夫アランを逮捕する。
アランは地元の名家ラファティ家の6人兄弟の末っ子だった。同じモルモン教徒としてアランを気づかうパイアーだったが、アランはすでに信仰心を失っていた。この1年、家族につきまとっていた聖書やモルモン書の預言者似のひげ男が犯人ではないかと言うアランは、兄弟とその妻子たちを見つけてほしいと頼むが、彼らを見つけるのは容易ではなかった。
「犯人を見つけたいなら、モルモン教徒を疑え」と指摘するアランは教会が隠す闇を示唆し、捜査を進めるパイアーは自身の信仰と向き合うことになる。
事件の概要
1984年、ユタ州。モルモン教徒であるラファティ家の長男ロンと次男ダンにより、末っ子アランの妻ブレンダとその娘が惨殺される。ブレンダ母子を取り除くよう神の啓示があったと主張したダンは終身刑に。一方、収監中に自殺未遂を図ったロンは、裁判に耐えうるかどうかで争った末、死刑判決が確定するが、刑が執行される前に自然死した。
おちゃのま感想
全7話なのですが、義妹を殺したダンやロンの思想や言い分にゲンナリしてしまい、思いのほか観終わるまでに時間がかかってしまいました。
実話なので、感想を語るというのも変だなと思うのですが、ドラマの中で描かれたブレンダと娘が殺害されるまでの経緯を見ると、このむごたらしい犯行を止めるチャンスはあったのではないかと感じてなりません。特に、ダンとロンの問題を知っていた教会のお偉いさんたちは、彼らの妻子を保護する責任はなかったのかと疑問に感じます。危険な思想に傾倒しているダンとロンを放り出し、事件が起きた後も捜査妨害ともとれる行動をとる件には唖然とした気持ちにさせられました。
さて、事件に対するムカムカする感情は脇において、ドラマ自体の感想としては、俳優陣の演技力が素晴らしい作品でした。事件の捜査で信仰がゆらぐ主人公パイアー刑事の葛藤、被害者ブレンダの凛とした強さ、犯人のロンやダンの狂気など、迫真の演技に見入ってしまいました。不快な感情を抱いてしまったのも、演技の素晴らしさが理由かなと思います。
このドラマは、ジョン・クラカワー氏の『Under the Banner of Heaven』を原作としているので、本に沿った内容だと思うのですが、自分としては事件を解決した後のパイアー刑事が事件を通して知った教会の闇をどう受け止め、どう消化したのか、もう少し踏み込んで欲しかったなと感じてます。
共感できる部分がいっさいなく、犯行の理由も理解不能だったこのドラマを観て思ったことは、フィクションという点が救いだと思っているドラマ『ハンドメイズ・テイル』の中で描かれているギレアドのような国は案外かんたんに出来てしまうのかもということでした。思想や信念が異なる相手を受け入れることは難しいけれど、違いの壁を崩す勇気と寛容さを持たなければ・・・と、危機感を抱かされたドラマです。