原題:Sue Thomas: F.B.Eye
作品データ
- ジャンル:実話を基にしたドラマ
- シーズン:3(ひとまず完結)
- エピソード:56
- 主な舞台:ワシントンDC
- アメリカでの放送:2002-05
- キャスト:ディアン・ブレイ(スー・トーマス)ヤニック・ビッソン(ジャック・ハドソン)
- メモ:最終話まで視聴済
- お気に入り度:
あらすじ
幼い頃に聴覚を失ったスーは、母と言語療法士の厳しい訓練のおかげで手話だけでなく読心術を習得した。
念願のFBIに採用されたスーは、聴導犬のリーヴァイと共にDCへ引っ越すが、配属先は特別プロジェクトとは名ばかりの指紋整理係だった。障がい者枠での雇用だったと悟ったスーは落胆したものの、強い信念で障がいを克服させた母を見習い、人事に直訴する。「形だけの仕事は不本意です」と強気に訴えたスーは異動を求めるが、人事担当者だと思った相手は捜査官ジャック・ハドソンだった。
スーの読心術に感心したジャックは、スーの能力が不利な状況に陥っている裁判の助けになるとひらめく。法廷で実力を示したスーは捜査官としてジャックのチームに加わることになるが、チームにはジャックが“試し”で会話を読ませたマイルズがいた。FBIで初めてできた友人ルーシーご自慢の恋人マイルズは、別の女性を旅行に誘っていたのだ。
おちゃのま感想
2002〜05年に制作された作品なので古さはありますが、他にはない唯一無二のテーマを描いた素晴らしいドラマでした。お気に入り度を5にしなかった理由は、宗教色がちょーっと強かったからですが、同時多発テロ後の2002年開始ということを思うと、仕方ないのかもしれません。
実在するスー・トーマスさんの体験をもとにした作品で、ご本人もドラマに登場し、スーを演じるディアン・ブレイさんとしみじみ語り合うシーンは印象深いです。ドラマの中のスーの背景はトーマスさんの経歴に沿ったものですが、トーマスさんのFBIでのキャリアは4年間だったとのこと。FBI退職後に執筆した自伝が、このドラマの基になったものです。
ドラマの感想に戻ると、犯罪捜査ものの作品なのに見終わった後に温かなものが心に残る。そんな愛あふれる作品で、自分が思うに、このドラマのジャンルは犯罪捜査というより人間ドラマ。あふれる愛の原動力は、主人公スーを中心としたメインキャラそれぞれの人間性にほかなりません。オフィスでのリラックスした会話からも、見せかけではないチームワークの良さを感じます。あまりの仲良しぶりに、このチームの指揮官となる上司の影が薄くなり、定着しないほどでした。
そんなふうにチームがまとまったのは、スーが加入してからのように思えます。スーが加わる前のチームがどんな雰囲気だったのか想像してみると、おそらくマイルズは鼻持ちならない存在で、なんとなくギスギスした空気があったんじゃないかと思うんですよね。(マイルズ本人は気づいてなかったかもしれませんが・・・)マイルズがチームに溶け込めた要因は、達観しているスーのおかげともいえます。読心術で会話することで身につけた特技かもしれませんが、注意深く周囲の状況を把握するスーは人の本質を見抜く鋭い視点の持ち主で、マイルズの善良さも見抜いていたのだと思います。
さて、嫌われ者から始まったマイルズは、このドラマのわたしのお気に入りキャラです。ヒール役のマイルズが愛されキャラに変貌したことで、より深みのある作品になったと思います。始まりはスーの天敵のような存在だったマイルズがスーを認め、プライドで覆っていた優しい本音を見せる流れは、わたしの心をガッツリつかむツボでした。特に、事件に巻き込まれた妹を心配するマイルズが心情をスーに吐露するシーンは、印象深く心に残っています。
そして、このドラマで忘れてはならないのが、サブキャラのみなさん。DCに到着したスーが最初に親しくなる整備工場のチャーリーに始まり、時おり顔を見せてくれるみなさんが、ドラマを大いに盛り上げてくれました。中でも、スー役ディアン・ブレイさんの夫であるトロイ・コッツァーさんが演じるトロイとスーのシーンは特別なものを感じました。手話で会話するスーとトロイのシーンは魂がこもった素晴らしいもので、ふたりの意気込みを感じます。さらに、名物キャラのハーウェイやアマンダなど、愛すべきキャラが揃っていました。そして、忘れてはならない聴導犬リーヴァイが本当に可愛くて、観ているわたしのことも癒やしてくれました。
ドラマ自体は放送局の都合でキャンセルされましたが、スーの物語としてはひとつの区切りがついたのかなと思います。互いに惹かれ合いながらも踏み出せないジャックとの恋や、キャリアより居心地の良い場所に留まるというスーの選択は現代では評価されないかもしれませんが、それがスーらしいと感じ、満足しています。