原題:Schitt’s Creek
作品データ
- ジャンル:コメディ
- シーズン:6(終了)
- エピソード:80
- 主な舞台:架空の町シッツクリーク
- アメリカでの放送:2015~20
- キャスト:ユージン・レヴィ(父・ジョニー)、キャサリン・オハラ(母・モイラ)、ダン・レヴィ(息子・デヴィッド)、アニー・マーフィー(娘・アレクシス)
- メモ:シーズン最終話まで視聴済
- 評価:
ストーリー
経理担当者に資産を横領され、破産したローズ家に残った唯一の財産は、かつて冗談で買ったシッツクリークという名の田舎町だけだった。
まったく馴染みのないシッツクリークに身を寄せることになったローズ家の4人は、町長ローランドの不躾な歓迎を受け、町の古びたモーテルの質素な部屋に落ち着く。家族は再起を誓いながらも、いつしかシッツクリークの町になじんでいく。
おちゃのま感想
ネタバレしてます!
異例のバーチャル開催となった今年(2020年)のエミー賞で、作品賞、主演男優賞(ユージン・レヴィ)、主演女優賞(キャサリン・オハラ)、助演男優賞(ダン・レヴィ)、助演女優賞(アニー・マーフィー)とコメディー部門を総なめにした『シッツ・クリーク』。
授賞式は密を避けてのリモート開催でしたが、『シッツ・クリーク』チームは貸切ったレストラン(のような?)に集まり、寂しさが否めないショーを盛り上げてくれました。そのエミーでの温かな雰囲気に感動したことがきっかけで見始めたら、いろんな愛をテーマにした深い内容にすっかり魅了されました。
最初に挙げたいこのドラマの魅力は、元金持ち家族のローズ家4人の人柄です。身についた金持ち感覚は抜けないけれど、もともとの天然さからなのか、ローズ家の面々は町の住人達との間に壁を作ることもなく、極貧の現実をしっかり受け入れ、過去に執着していません。時としてアピールが過ぎる母モイラにしても、(元?)女優としてのプライドゆえのこと。町の女性たちの中にぐいぐいと入り込み、いつしか重鎮的な存在になったモイラには、言葉ではなく態度でシッツ・クリーク愛を感じます。
一方、住人たちは破産したローズ家に同情しつつも、「町にセレブがやってきた!」な気持ちは抑えきれず、興味津々。特に町長のローランドは、迷惑がられながらもジョニーのまわりをうろつき、ことあるごとにちょっかいをだし、素直でないジョニー愛を最初から最後まで見せてくれます。
見どころは、偏見なき視点で描かれる多様性です。ドラマの発案者でもあり、父ユージンと共にこのドラマを企画制作したデヴィッド役のダンのメッセージ溢れる物語にコメディらしい味付けがされており、心に響くエピソードが多かったです。
わたしのお気に入りは、シリーズを通じて最も成長した娘のアレクシスです。発言の内容から察すると、金持ち時代は世界を股にかける恋愛の猛者で、数々の失敗(かなり危険な目にも遭ってきた)を持ち前の明るさで切り抜けてきたと思われます。そんなアレクシスは、心根がとても純粋で人間味あふれる女性なんです。
物語の序盤ではお気楽自己中なアレクシスですが、シッツ・クリークの町に馴染むと共に真の友情や愛を知り、大切な存在を見つけます。自分の人生を見直したアレクシスは一念発起、高校へ編入し、大学へ入り、しっかりと自分の足で人生を歩き始め、応援したくなる!そんな女性に成長しました。
いろいろ褒めちぎりたいポイントがあるのですが、もうひとつだけ挙げるとしたら、各キャラの掘り下げ方が丁寧で、ローズ家の4人には家族としてのリアルさがありました。(父ジョニーと息子デヴィッドは本当の親子だけど)最終シーズンの撮影を追ったスペシャルエピソード『さよなら、シッツ・クリーク~6シーズンの感謝をこめて~』を見て納得したのですが、このリアルさは現場の雰囲気からも伝わってきました。演じるだけでなく製作総指揮を務めるユージンとダンは、本当の家族のようにモイラを敬い、アレクシスを見守り、そんな雰囲気の中で撮影がされておりました。
ブラックなコメディはどうも気疲れしちゃうな~という時は、ぜひ『シッツ・クリーク』の世界に足を踏み入れてください。派手さはないけれど、大切な何かを見つけられる、そんなドラマです。