原題:Épidémie(英題:Outbreak)
作品データ
- ジャンル:パンデミックスリラー
- シーズン:1(未定)
- エピソード:10
- 主な舞台:モントリオール
- 放送:2020-
- キャスト:ジュリー・ルブレトン(アンヌ=マリー・ルクレール)ギョーム・シール(ドゥメール公安大臣)ナンシー・サンダース(ネッリ・カジュリク)
- メモ:シーズン1最終話まで視聴済
- お気に入り度:
あらすじ
はじまり
モントリオール郊外の農場。大量のコウモリが暮らす小屋でフェレットを繁殖している老人ジャックは、病気だと思われるフェレットを獣医に診せることもなく個人的に取引しているペットショップに届ける。その後、ジャックの小屋のフェレットが相次いで亡くなり、ただの風邪だと言い張っていたジャックも亡くなった。
緊急衛生研究所
義母が入所している高級老人ホームで集団食中毒が発生したことで、緊急衛生研究所の所長アンヌ=マリーは夫マルクの浮気に気づく。不倫相手の家で過ごしていたマルクは、母の世話を口実に使っていたのだ。動揺したアンヌ=マリーの失態で、ホームの責任者は食中毒の原因は精肉会社だと発表してしまう。この問題を重く捉えた公安大臣のドゥメールは、懇意にしている広報を緊急衛生研究所に招き入れる。
感染
ジャックがペットショップに届けた2匹のフェレットのうち、逃げ出した1匹を拾ったホームレスのアラシーが亡くなり、仲間のホームレスの死が続く。もう1匹のフェレットは、ドゥメール公安大臣とパートナーの子を代理出産する女性の息子へプレゼントされ、目に見えぬ感染が広がってゆく。緊急衛生研究所はホームレスの死の調査を始め、イメージ優先のドゥメール大臣と広報は危機感を抱くアンヌ=マリーの妨げになってゆく。
おちゃのま感想
世界中を恐怖に陥れた新型コロナウイルスのパンデミックと酷似しているということで、評価の高さは知っていたけれど手が伸びなかった『アウトブレイクー感染拡大ー』をついに視聴しました。現実の世界はまだまだコロナ禍ですが、パンデミックを経験している今だからこその視点で視聴でき、細やかな点に注目させられたドラマでした。
新型コロナウイルス(CoVA)の感染が広がる恐怖をリアルに描きながらも、このドラマはパニックや悲壮感に満ちた内容ではなく、むしろ人間ドラマに焦点をあてたものでした。主人公アンヌ=マリーをはじめ、様々な立場の登場人物にスポットを当てており、忍び寄る見えないウイルスを人々がどう捉え、どう対処してゆくのかという部分が詳細に描かれています。
ドラマは感染2日目から収束までが全10話の中で描かれており、感染源を突き止める件がクライマックス。現実のコロナ禍を知ってるので、こんなに簡単にはいかないよと思ってしまいますが、コンパクトにまとめられた内容は良かったと思います。
丁寧に掘り下げられていた登場人物たちの中で、やはり注目は主人公アンヌ=マリーです。大惨事を招きかねないCovaと闘いながらもイメージ重視の大臣への敬意を忘れず、感染予防のルール厳守を市民に呼びかけたいアンヌ=マリーにとっては邪魔でしかない広報に対しても感情的にならず、職務を全うしようとする姿は感動ものでした。プロに徹し、常に冷静なアンヌ=マリーですが、浮気夫マルクに向ける人間らしい感情がまた良かったです。
そして、もうひとり、地道に調査を続けるネッリの静かな存在感が素晴らしかったです。驚いたのが、ネッリ役のナンシー・サンダースさんの本業は伝統的なイヌイットアートと現代性を融合させるアーティストで、これが初演技ということです。ネッリのあの寛容さは演技ではなく、サンダースさんの素顔なのかもしれません。
アンヌ=マリーたちのその後を観たい気もしますが、ひとつの物語としては完結したかな。思うように感染を食い止められないアンヌ=マリーの焦燥感に共感する一方で、非情なまでの厳格ルールを強いられる市民側の不満も理解出来るので、言葉では言い表せない複雑な感情を抱き、考えさせられるドラマでした。