原題:Fleabag
作品データ
ジャンル:ドラマ
シーズン:2(完結)
エピソード:12(完結)
主な舞台:ロンドン
放送:2016~19
メモ:全話視聴済
ストーリー
つかず離れずの恋人ハリーと何度目かの別れをしたフリーバッグは、適当な男性と遊びながらもハリーは戻ってくると思っていた。しかし、予想外にハリーは新しい相手を見つけ、フリーバッグの世界から去ってしまった。
フリーバッグの世界の住人は、依存症で歪んた性格の夫マーティンで満足している完璧な姉クレアと、陰険な代母と付き合っている父だけ。一夜限りの相手と楽しんだとしても、フリーバッグの心は満たされない。経営しているカフェ同様、人生に行き詰ったフリーバッグは閉塞感の中にいる。その原因は、特別な存在だった親友ブーの死だった。
おちゃのま感想
コメディだと思って見始めたら、とんでもない!
家族って、人を愛するって、友情って・・・。哀しみというスパイスが効いた人生をどう生きる?そんな奥深いテーマを感じるドラマでした。チョイ役と思う人物も、その人が置かれた背景が見え、さすがUKドラマ!と、思わずうなってしまう見事な人物像の掘り下げ方がされてます。
自由人に見える主人公フリーバッグの心の奥底にある問題が明かされたシーズン1。苦しみを隠すフリーバッグが心をさらけ出せるかもしれない相手を見つけ、愛するまでになるシーズン2。1話30分で各シーズン6話ずつ。あっという間に見終わりました。
主人公フリーバッグや、彼女に大きく関わる姉クレアだけでなく、わたしは悲哀に満ちた彼女らのパパの心情に思いを馳せたくなりました。「愛してる。けど、いつも好きというわけじゃない」という率直な娘への思いを言えるパパはそういません。パパのこのセリフで和んだ空気になるんですが、これ、ジョークではなく本音だと思うんですよ。挨拶のような「愛してる」ではなく、真実の愛情を感じさせられたセリフです。妻を亡くしたのち、娘たちの代母と付き合い、その女性に頭があがらないパパ。後ろめたい気持ちと、残りの人生ひとりでいたくないパパの揺れる心情は、なかなか見ごたえがありました。
脇を固めるキャラの中で、ダントツ存在感を示していたのは、パパの恋人、フリーバッグの代母です。演じるのは『女王陛下のお気に入り』でアカデミー主演女優賞を獲得したオリビア・コールマン(Olivia Colman)。笑顔なのに不愉快な印象を与え、フリーバッグをいたぶる演技は絶品でした。ジョークで流されそうな場面を、深い意味を感じさせるものにしています。
そして、なにより魅力的だったフリーバッグ。彼女がカメラ目線で放つ一言で視聴者をフリーバッグの世界に誘うというウマイ演出がされてます。実際、第1話の冒頭から、なにやら友人の話を聞いているような気持ちにさせられます。それは、演じているフィービー・ウォーラー=ブリッジ(Phoebe Waller-Bridge)自身の脚本だからかも。作り手の思いがストレートに伝わってくる…そんな身近な距離感のドラマでした。
自分が犯した過ちでかけがえのない親友を亡くした苦しみを乗り越えられないフリーバッグが、シーズン2で出会った相手はパパと代母の結婚式を執り行う神父さま。もう少しフリーバッグの人生を眺めていたい・・・そんな気持ちにさせられたところで、フリーバッグの物語は終わります。
哀しさの中にあってもユーモアを忘れずに。そんな教訓さえ感じるドラマでした。