原題:Unbelievable
作品データ
- ジャンル:実話
- シーズン:1(完結)
- エピソード:8
- 主な舞台:ワシントン州、コロラド州
- アメリカでの放送:2019
- キャスト:ケイトリン・ディーヴァー(マリー)、メリット・ウェヴァー(デュバル)、トニ・コレット(ラスムッセン)
- メモ:最終話まで視聴済
ストーリー
2008年~2011年にワシントン州とコロラド州で実際に起きた、連続レイプ事件を記事にした『An Unbelievable Story of Rape』(T. Christian MillerとKen Armstrongによる共同執筆)を基にした物語。
2008年、ワシントン州リンウッド。里親からの独立支援施設で暮らす10代のマリー・アドラーがレイプされた。通報を受けた警察は捜査を始めるが、刑事のパーカーは執拗な聴取を繰り返し、レイプでショック状態のマリーを追い詰める。注目されるのが好きなマリーに手を焼いたという里親の懸念を聞いたパーカーは、マリーの作り話ではないかと疑っていた。
翌日、パーカーに指示された通り、自らの手で書いた供述書を届けたマリーは再び聴取された。パーカーと相棒のプルーイットはマリーの証言の些細な矛盾を追求し、マリーは嘘をついたと認めてしまう。供述書の書き直しを命じられたマリーは「夢を見たのかも知れない」と書き、刑事たちを怒らせた。その後、警察は例をみない“虚偽申告”でマリーを訴え、実名が公表されたマリーは友人、職場、住む場所を失った。
2011年、コロラド州のゴールデン署でレイプ事件の捜査を始めたデュバルは、夫が勤務する別の署のラスムッセンも同じ手口のレイプ事件を捜査していると知る。同一犯の犯行を確信したデュバルとラスムッセンは合同捜査を決め、手がかりのない連続レイプ事件を調べ始める。
おちゃのま感想
実話だけに、非常に重い内容のドラマでした。
物語は2つのストーリーで成り立っていて、ワシントン州のレイプ被害者マリーの物語と、コロラド州で連続レイプ事件を捜査するふたりの女性刑事の物語です。
取材をしたうえでの記事を基に作られた作品なので、登場人物それぞれの設定はモデルになった人物に近いのではないかと思います。見せるうえでの演出はあったとしても、たまたま出会った刑事によって、被害者の人生がまったく違うものになるという恐怖を感じさせる作品でもあります。
もし、レイプ事件を捜査する刑事全員がマリーの事件を担当したパーカーやプルーイットのような刑事だったら、犯人逮捕は望めなかったと思います。被害者を気遣うこともなく、執拗にレイプの詳細を繰り返し語らせ、矛盾を指摘する無神経さ…。演出かもしれませんが、幼い頃から虐待を受け、里親を転々としているマリーへの無意識の差別さえ感じました。それに比べ、被害者アンバーに対するデュバルの気配り。マリーの事件を見せてからの流れだけに、真摯に仕事するデュバルに胸が熱くなりました。
コロラド州組のデュバルとラスムッセンのチームの執念ともいえる捜査で犯人は逮捕され、見つかった証拠の中にマリーの写真があったことでマリーも被害者だと特定されるわけですが、それを知らされた後のワシントン州組の刑事たちの態度も納得できないものでした。この事件に関して言えば、刑事としてやるべきことをやっただけという言い訳は通用しないと思うんです。自分の間違いに責任を感じていたパーカーはマリーの求めに応じ謝罪したけど、パーカーとともにマリーを聴取したプルーイットは謝罪していません。
酷い刑事たちへの怒りはこのくらいにして、もともと過酷な人生だったマリーがこの事件に負けることなく、結果的にリンウッド市を訴え、15万ドルを得たことにホッとしてます。「負けることなく」と書いたけど、一度は自殺を考えてるんですよね。友人も仕事も住む場所も失い、信じてくれる人がいない状況での生活は、想像を絶する苦しい日々だったと思います。思いとどまってくれてよかったです。過酷な状況の中、マリーが知り合った裁判所の受付の女性、公選弁護人、カウンセラーの偏見のない姿勢が、希望の光のように感じました。
さて、マリーの件ばかりになってしまいましたが、このドラマのもうひとつの見どころ、ふたりの女性刑事、デュバルとラスムッセンも忘れてはいけません。よく見る縄張り争いなどもなく、考えの違い(宗教などの)があったとしても、互いを尊重しあう姿は見ていて気持ちの良いものでした。ちなみにラスムッセンはデュバルの憧れの存在的先輩です。一途なデュバルと、サバサバした性格のラスムッセンの関係が、悲痛な事件を扱う物語の中で、心地よいものになってます。
逮捕されたレイプ犯は327.5年の懲役が言い渡され、新たな人生を歩き始めたマリーがデュバルに感謝の電話をかけたところでドラマは終わります。犯人逮捕や和解金より、自分を捜し、間違いを正してくれたデュバルたちの存在が嬉しかったと話すマリーの言葉は心を揺さぶります。
余談ですが、このドラマを見ようと思ったきっかけは、内容や評価の高さからだけでなく、『ナースジャッキー』のゾーイ役が印象に残る女優さん、デュバル役のメリット・ウェーヴァー(Merritt Wever)が目当てでもありました。熱心で献身的な刑事デュバルを主人公にしたドラマを作ってほしいと思うほど、素晴らしかったです。
事件のせいで人生が変わった被害者のみなさんが少しでも安心した暮らしに戻れていることを祈りたくなる作品でした。