原題:True Detective“Night Country”
作品データ
- ジャンル:犯罪捜査ミステリ
- シーズン:シーズン4(アンソロジーシリーズ)
- エピソード:6
- 主な舞台:アラスカ州エニス(架空の町)
- リリース:2024
- キャスト:ジョディ・フォスター(署長ダンヴァース)カリ・レイス(警官ナヴァロ)
- テーマ:人間の孤独や嫉妬といった闇、アイデンティティ
- メモ:シーズン4視聴済
- お気に入り度:
あらすじ
アラスカの極寒の町エニス。町が暗闇に包まれる極夜の中、研究施設の科学者8名が失踪する事件が起きる。施設内を捜索した警察署長のリズ・ダンヴァースは、切断された舌を発見する。6年前に起きた未解決事件と関係していると確信するアラスカ先住民の警官ナヴァロは独自に調査をはじめ、ダンヴァースと衝突する。ふたりが言い争う中、凍りついた科学者たちの遺体が発見される。
おちゃのま感想
トゥルー・ディテクティブシリーズは見たことがなかったのですが、ジョディ・フォスター主演とあって、期待値マックスで視聴いたしました。
これはトゥルー・ディテクティブシリーズのカラーなのかもしれませんが、「人間ドラマを織りまぜた犯罪捜査」というわたしの短絡的な想像を裏切り、深いテーマと人物描写に重きを置く内容でした。作品の根底にあるのは、舞台になったエニスという架空の町の陰鬱さ。陽がのぼらない極夜の暗く寒い風景の中で繰り広げられる物語に温もりを感じる部分はなく、寒々しく、救いを見つけられないような内容でした。さらに、フィオナ・ショウ演じる謎の人物ローズや精神を病むナヴァロの妹、のちにナヴァロ自身も見るようになる超自然的な不可思議な世界も描かれ、このドラマはもしやオカルトホラーなの?と思ったくらい、複雑で理解が難しかったです。
衝撃的な姿の遺体が発見されたところから興味深い事件捜査が始まり、地域社会の問題と密接にからみながら一通りの解決まで描かれるのですが、わたしが思うこのドラマのテーマは事件捜査ではなく、極夜という自然とリンクしたような孤独感やそこで暮らす人々が抱える人間らしい欲望や嫉妬といった闇だったように感じます。
そんなふうに感じた理由は、事件の捜査が遅々として進まない一方で、事件を追うダンヴァースとナヴァロそれぞれの背景や因縁の経緯が時間をかけ丁寧に描かれていたからです。さらに、ふたりの関係だけでなく、そこに関わる汚職警官ハンクや、ハンクの息子で実直な警官ピーターについても、割り切れない人間の感情の複雑さを丁寧に(丁寧すぎて辛くなるほど)描いていました。
特に、ジョディ・フォスターが演じるリズ・ダンヴァースという女性。屈折した性格や、相棒ナヴァロに「町の男みんなと寝てるの?」とツッコまれるほどの男性関係に共感できず、好感度はゼロ。しかし、物語の進行とともに描かれるダンヴァースの背景を知ると、そうすることでしか癒せないダンヴァースの心の叫びが聞こえてくるようで、彼女の抱える闇に惹き込まれました。先住民の血を引く義理の娘と白人女性のダンヴァースの間にある溝。愛しているはずなのに、それを素直に表現できない親子関係。自分のアイデンティティを求める娘を理解しつつも、認めることができないダンヴァースの悲しみ。求めてやまない愛は手に入らず、孤独と闘うダンヴァースには目に見えない血が滲んでいるようでした。そんな複雑な感情が彼女の孤独感を深めているのだと感じ、ダンヴァースの内面を見せてくれたジョディ・フォスターの演技に感動しました。
最後に、もうひとりの主人公ナヴァロについても少しだけ。彼女のラストは曖昧に描かれて、生死不明で終わってしまいました。視聴者に託された彼女のその後を自分なりに想像してみたのですが、彼女はいまも求めるものを探し続けているように思えます。何かを追い求める彼女がいる場所は、わたしたちが生きるこの世界なのかもしれないし、彼女が見ていた別の世界なのかもしれません。